賃貸住宅における賃貸借契約(極度額に関する参考資料)
先週、賃貸住宅の賃貸借契約に係る研修会があったため、愛知県司法書士会の所属委員会より派遣され、参加してきました。
テーマは「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改定版)」「賃貸住宅標準契約書(H30.3版)」「民間賃貸住宅に関する相談対応事例集(改定版)」の各解説、最後にグループ討議という内容でした。
その中で、今後、新たに問題となってくるであろう部分として、民法改正(H29改正、H32.4.1施行)を踏まえて、個人の根保証に関しては極度額を限度として責任を負うことになるため(改正民法465条の2第1項及び2項)、住宅の賃貸借契約に基づく賃料や損害賠償債務等を保証する連帯保証人においても、極度額の適用がなされることになります。
具体的には、改正民法施行後、賃貸借契約を締結する際に、連帯保証人となる方は極度額の範囲内においてのみ(例:極度額金○○万円)その責任を負担することになるわけですが、はたして一体いくらの範囲の金額が妥当なのか、という問題が生じることになります。言うなれば、改正法施行前においては、連帯保証人は原則として賃借人が負う金銭債務(例:滞納家賃や原状回復費用)を、いわば青天井で負担せねばならなかったところ、改正法により一定の制限が加わるということになります。もちろん、極度額の設定においては、契約当事者間において充分な協議が行われることが求められますが、昨年3月に、国交省より非常に有益な資料が提供されています。
http://www.mlit.go.jp/common/001227824.pdf
詳細は上記資料に譲るとして、賃料を概ね4万ごとに区切りを付けて、その損害額の統計を取っており(例:賃料8万~12万の物件の損害額のケース、平均値50万、中央値35.6万等)概ね賃料の約半年分の損害額が多いように思われますが、反面、裁判所の判決における連帯保証人の負担額の調査結果からは、平均で家賃の13.2ヶ月分という数字も出ています。
いずれにしても、極度額の設定については、今後の実務慣習を待たねばならないところが多くあるでしょうが、改正民法の影響が、実生活において色濃くでるであろう一面と言えます。
弊事務所も賃貸借にかかわる原状回復や敷金保証金の問題、明渡し請求等、比較的ご相談に応じることが多く、今後の実務の動きを注視しているところでもあります。